手で描く
手で描いてます。
建物の設計を生業としています。設計図はMacのCADで描いていますが、それは建物のカタチが固まって清書する段階から。
それまでは、スケッチブックの上で考えます。調子がいい時は、脳みそが、ではなく私の右手が建物をデザインしてくれる場合もあります。(オカルトの自動書記ですなw)
ま、余っ程の条件が揃わないと私の右手は本気を出してくれないので、右手が紙に描いた線とかカタチを、目で見て、それが脳みそにフィードバックされて来て、考えて、また右手が描く。それを何度も何度も繰り返して、苦しんで、もがいて、酒の力借りたり、音楽で無理矢理気分を上げたり人のせいにしながら建物をデザインしています。
国語の教科書を声を出して読んで、読んでいる自分の声を耳で聞くと、内容がより理解できるのに似ているかもしれないですね。居ませんでした?テスト中に問題文を声出して読む迷惑な友達?それですね。
使う道具は、最近はもっぱら赤い表紙のモレスキンのプレーンノート ラージサイズに鉛筆かシャープペンか、万年筆で描いています。アイデアが練れない、よいデザインが降りて来ない時は、道具のせいにしてしまいますね。
道具の話は、またの折りに。
本当は設計図も手描きしたい
したいんです本当は。私が学校出て設計事務所に入った頃(1985)は、ドラフターでトレーシングペーパーにシャープペンで手描きで、それを青焼きが普通の頃。(判るかな?青焼き。)ちなみに当時のMacはマッキントッシュプラスが出る頃で、やっと日本語が使えるようになったぐらいです。
ドラフター↑
マッキントッシュプラス↑
それから約10年ガッツリ手描きで図面描いて、そののちCAD(Mac)に移行したんですけど、図面はね、やっぱり手描きの方が伝わるんですよ。迫力というか、デザインした僕らの気迫が乗るんですね。最初に居た事務所に遊びに行った時、私が昔描いた手描きの図面を引っ張り出したんですが、完全に負けてますね。今CADで描いている図面は。
Macのキーボードに本気で欲しいモノ:気迫注入コマンド
ウチの業界にある伝説があって、白井晟一という建築家がいました。彼の手描きの図面がそれは凄かった。畳の目、壁クロスの織り目まで描き込まれている。
で、長崎の佐世保に新和’銀行の本店を設計した。 すると工事を担当することになった現場監督のボスが、彼の図面を見て泣いた(らしい)。図面ですよ、図面。 手描き時代の私もいつか俺が描いた図面で人を泣かせてやる!!と精進していました。
ただね、一度CADで仕事やり出したら、もう手描きには戻れないんです。ドラフターには、command+Z (Macでの”やり直し”)機能は搭載されてないしね。
決定的なのは、修正、変更の手間も含めたスピードの問題。断然CADが速い。同じ間取りが連続するマンション系だったら、下手したら10倍速い!
そう言う訳で、アイデア〜デザイン〜プレゼンは手描きで、(但し平面図はCAD)実施設計はCADでという半端な折り合いを付けてやっています。CG(3D)は少し囓ったけど、捨てました。鉛筆と透明水彩でスケッチを描いた方が圧倒的に速いから。
手描きの意味
なんで私は手描きでデザインするのか?というと、これまたスピードの問題だと思ってます。但しこれは効率の問題ではないんです。 脳みそが高速に回転していろいろなアイデアを試行錯誤するうちに、デザインが固まっていくのだけど、CADでは脳みその回転スピードに操作がついてこれない気がします。 手描きならカタチをイメージした瞬間に同時にそれを紙に描けている。 またCADだと、操作するのに脳みそパワーの一部を削がれている気もするんです。実際、トライはしてみましたが、よいアイデアが降ってくる率は低いですね。
自分が今描いているモノを見ながら考えるって行為は、アウトプット/インプット/シンキングの各行為(タスク)を順番に実行して少しづつカタチを作り上げていく”積み上げの作業” ではないんです。 描き(アウトプット)ながらそれを見(インプット)ながら考え(シンキング)ながらさらに描く。 同時進行で、3つのタスク同士がシンクロするのが理想です。しかも段々と作り(積み)上げて行くイメージではなく、むしろある時ポンッとすぐれたアイデア、デザインが転がる落ちてくるのを待つと云うか、その落ちてくる穴を探してるような感じなんです。 だから多分、操作すると云う意識が必要なCADでは、3つのタスクがシンクロしきれないんでしょう。 だから手描き。
ま、これは超個人的意見ですけどね。知り合いの私と同世代のグラフィックデザイナーは、驚くことに紙にペンよりMac上でイラストレーター使ってマウスでスケッチする方がしっくりくると言ってました。
人それぞれですな。
では、今日はこのへんで。次回はスケッチブックや筆記具の話を
煮詰まったら落書きに逃げ込むのクセは小学校からです↑