具はもちろん、ソースまで根こそぎすくい取れるサーバを作ろう《設計編》
美味しいソースは具の下に隠れている
我が家は大皿料理が多い。
デッカイ皿にどんと盛り付けて、家族みんながそれぞれ取り分けて食べます。
海老は全部で何尾あるのか? コイツ今、海老取った?
牽制し合いつつ、遠慮した振りしつつ、譲り合って食べる。
で、この取り分けるスプーン?サーバ? 今はティ○ァールのデカイスプーンを
使っているのだけど、なんか今イチなんです。
ソースが液体状の料理(例:片栗粉が足りなかったパリパリ皿うどん)とか
具や麺だけ取れて、最後にソースが皿に残る。ソースが旨いのに。
具や麺とソースとをバランス良く取り分けたい。
そんなに文句があるなら、自分で作れ!
はい了解です。と云うわけで作ることにします。
では、まずコンセプトを固めて行きましょう。
すくい取る道具に答えがあるかもしれません。モチーフになりそうな道具を考えて
いきます。
モチーフ1:チリ取り
巨大なスプーンが何故使いづらいか?と云いますと、あの丸さです。
スプーンの縁のカーブがきつく、皿との接地面が大変狭うございます。
つまり皿と設置している狭い点でしか、ソースはすくえてないわけです。何と勿体ない。
では、ちり取りを見てみましょう
↑ちり取り(出典:無印良品)
見事な設置面積です。設置率は限りなく100%に近いのではないでしょうか。
しかし今回は平らな床では無く、わずかに湾曲した皿が相手ですので、さらなる工夫が
必要です。(しかも1次ではなく、2次曲面である!)
暫定的にでは有りますが、目標設置率を80%といたしましょう。
モチーフ2:底曳き網
宝石サンゴが沢山取れることで近年再注目されている漁法ですね。
↑底曳き網漁(出典:新潟 漁師への道)
これまた見事な設置率です。しかもこちらは金属では無く、ナイロン製の網ですから
複雑な海底の地形への追従性も兼ね備えています。実に見事です。
ここで、2点のモチーフを見比べますと、大きな差異の存在に思い当たりました。
ちり取りは押して使うタイプ。一方、底曳き網漁は引くタイプです。
180°真逆ですが、その効果は2点とも秀逸です。
もしかすると、0°と180°の中間点、90°辺りに我々の探し求めている答えが潜んでいる
のかもしれませんね。
何となく形のイメージが湧いてきました。
モチーフ3:トマホーク
物騒な飛行物体を打ち落とさない方のトマホークです。
美しい形です。グリップ部分のカーブが特にいいですね。
このカーブがこの道具が、直線的に運動させて使うモノではなく、円運動で使う
道具であることを物語っています。円運動が生じる遠心力を利用して効率を上げる
のでしょう。機能性を見事に形にした好例と言えます。
米国先住民の知恵がここに結集されています。
もう一つ着目すべき点は、写真下部の文字です。全長:29cmとあります。
思った通りです。私も30cm前後が一番使いやすい長さなのでは?と予想していました。
設置率80%を確保した上で、押す でも 引く でもない円運動の利点を
最大限に活かした形で、全長30cm前後。これが、がどうやら求める答えのようです。
そして、使いやすい道具は、きっと美しい形になるはずです。
かなりイメージ固まって来ました。では次に、イメージを図面化します。
設計
私の本業は設計です、やはり職業柄、緻密な設計になってしまいますね。
緻密な設計図の全容↑
今回もかなりの難産でしたが、納得いくデザインが生み出せました。
トマホークカーブが手が皿の縁に当たるのを防いでくれるはずです。
材料は、工事中の住宅の現場からカッパらって分けて頂いた木材です。
ホワイトアッシュと云う材種で、堅く、木目がキレイな材です。
元々は、アルミサッシュの額縁に使った切れ端です。
厚さ:2cm 幅:10cm 長さ:十分
墨出し
では、材料のホワイトアッシュに、緻密な設計を慎重に反映させます。
資源を有効利用。2セット分取れました。 ↑
小口面にもぬかりなく すくう面の断面が描かれているのがお判りでしょうか?
この窪み部分は、彫刻刀でシコシコ彫ります。
製作の段取り
- 糸ノコでマジックの線よりやや大きめに切り取る。
- 窪み部分を彫刻刀で彫る、彫る。ひたすら彫る。
- ナイフで削って、全体に丸みを付け、形を整える。
- 途中で、色んな皿で実際にすくって見て、設置率80%を目指す。
- 紙ヤスリで仕上げる。
- オイル拭き仕上げ(多分ピュアオリーブオイル)
- 完成
では、今日はここまで
今日の結論:結局、トマホークのグリップに小さなチリ取りを取って付けたような形
今日の行方不明:底曳き網は何処に行った?
今日の予感:続編は来年中には上げれるでしょう。